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東京都文京区本郷7-3-1

12/8(土)東京大学山上会館で開催された「東京大学 経営のできる大学病院幹部養成プログラム」のキックオフシンポジウム「東大発!攻める大学病院経営」の開催報告です。

地域の実情に応じた病院経営戦略の企画・立案能力を兼ね備えた医療人材の養成へ

 本プログラムは東京大学大学院医学系研究科・医学部および医学部附属病院が開講するものであり、シンポジウムは医学部研究科長 宮園浩平氏、医学部附属病院 病院長齊藤延人氏の両氏の挨拶で開会した。宮園研究科長からは、プログラムの成り立ちと目的、および受講を希望する職員へのご支援のお願いがあり、斎藤病院長からは大学病院における医療安全や臨床研究の重要性と、それを可能にするのが経営であって、さらに消費税増税などの厳しい外的環境の中で、病院として経営を考えるチームが必要であると思う、プログラムにその役割を担う人材養成が期待されているとの挨拶があった。続いて、文部科学省高等教育局医学教育課大学病院支援室長 丸山 浩氏より、東京大学においては、大学の特色や強み、保有している教育研究資源を最大限に利用しながら、他大学の模範となるような人材養成に取り組むと共に、地域の実情に応じた病院経営戦略の企画・立案能力を兼ね備えた医療人材の養成に取り組む、高度医療人材養成拠点としての役割を期待しているとの来賓挨拶があった。次に塩﨑英司氏(医学部附属病院事務部長)から、今までの大学病院の経営の状況と本プログラムの背景についての基調解説があり、全国国立大学病院の法人化後の構造変化、高い医療費原価率などによる利益の減少、資産の老朽化、国立大学病院関係運営費交付金の減少など、大学病院は非常に厳しい経営状況にさらされていること、その中で高難度新規医療技術を実現しつつ、教育・研究を担ってゆくためには、従来の直感的な経験則に基づく収支均衡内での設備投資ではもう事業継続が困難であるという実感があり、そのためには系統だった知識を基に、新たな経営戦略を今までとは違う次元で考え直す時期であると思っている、という内容の話があり、会場でも参加者が大きくうなずく姿が見られた。

病院経営の基本とは ミッションの立て方と戦略、さらに戦術への落とし込みである

 続いて4名のシンポジストの講演が執り行われた。橋本英樹氏(東京大学大学院医学系研究科 保健社会行動学分野教授)は「本プログラムの目的と特徴」と題して、「医療経営ができる人材を育てるという観点は、東大ではすでに2007-2009年に施行された医療経営人材育成講座から始まっている。当時3年間で36人の卒業生を輩出し、その分野で活躍する人材を育てた。そして今回は10年の熟成期間を経て、さらに充実したプログラムを作るつもりである。そもそも経営をどのように捉えるか。個々の経営戦術(Tactics)をメインで扱うのではなく、どのように大きいミッションを実行に移すか、つまりミッションの立て方と戦略、さらに戦術への落とし込みこそが病院経営の基本である。また、特に国立病院をはじめとする高度研究教育病院は、制約の多い医療の外部環境に敏感かつアピールできる最前線にいるため、外部環境に働きかけ、自らのミッションを実行に移すことができる」と語った。橋本氏は加えて「大学病院とは『唯一無二になることによって競争せずに勝つ』、つまりその地域や社会において唯一無二の存在になることで外部環境を変え、自分たちの存在価値を社会に訴え、必要なヒト、モノ、カネ、インフォメーションを集め、その目的を実現するものである。そして、その考えができる人材を育て、その人材がクリティカルマスに達したときに、国立大学病院は日本の医療全体を変える推進力になるのではないか。本プログラムは、医療経営だけでなく制度経営まで射程に入れた高度経営人材を生み出してゆくということを考えている。幸い、国内でベストと思われる講師陣に来ていただけることになったので、プログラムを磨き上げてゆきたいと考えている。講師陣、受講者が一体となって、プログラムを完成させてゆくプロセスの参加者になっていただきたい」という本プログラムにかける意気込みを語った。

Post Author: プログラム事務局