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東京都文京区本郷7-3-1

12/8(土)東京大学山上会館で開催された「東京大学 経営のできる大学病院幹部養成プログラム」のキックオフシンポジウム「東大発!攻める大学病院経営」の開催報告です。(その2より続く)

現状のヘルスケア提供体制の分析と今後の病院経営への処方箋

 最後に登壇した松田淳氏(KPMGヘルスケアジャパン株式会社 代表取締役・パートナー)は、様々な医療機関や企業にコンサルティング・支援をしている立場から 「ヘルスケアシステム再編と病院経営の方向性」について語り、「ここ10年から20年で、高齢化による人口構造の変化、様々な形のイノベーション、社会保障給付費を含む財政的な問題により、病院経営そのものが変化する必要が生じている。民間病院、公立病院や大学病院ですら巻き込んでヘルスケアサービス提供体制の見直しを行わないと地域の医療が支えてゆけない状況が起こっている」と現状分析を述べた。今後の見通しとして、病床数・病院数は減少し、病院機能が集約されてゆくが、KPMGの調査によると、全国の病院のうち、およそ40%程度が機能強化(イノベーション対応、機能転換、合併・統合)のために喫緊の投資を必要としていること、しかしながら同じく全体の40%程度の病院が、機能性を維持・強化するために十分な財務力を有していないこと、よって投資実行が可能となるような事業の見直しと財務基盤の確立が、病院にとって重要な経営課題となること、各医療圏における病院の再編・統合・連携は必須であり、単独の病院のみで事業存続を図り地域医療を維持することは困難な状況であること、また、すでに各医療圏内で「生き残ることができる病院」「再編される病院」は、各病院の有する医療機能・財政力から、既にある程度明確だが、「あるべき病床構成」「地域医療体制」に至るまでには、複雑な調整が必要であることを語った。以上を踏まえたうえで、松田氏は今後の病院経営の示唆として1.病院オペレーションモデルの高度化 2.病院からヘルスケアシステムへの移行 3.患者層の拡大および地理的拡大 4.創薬等事業への発展機会探索が必要と語った。

ミドルマネジャーを対象としたプログラム

 続いて4人のディスカッションが行われ、南学氏が大学での共同研究、オープンイノベーションの実際の苦労や問題点を語ると、「どのように発信力を持って外的環境を変えてゆくかということを戦略の一つとして考える必要がある」と橋本氏が発言し、松田氏からは「経営環境を左右する外的環境は、例えば自治体の動きといったものも含めて、むしろ一つ一つ制度環境を整理して許可をとってゆくという考え方よりは、あるべき姿を大学などが発信して、その姿に向かって全体として進む、という方向で進めないと、なかなか国として変わらないのではないかという感覚を持っている」と語った。さらに渡邊氏は「組織が硬直している場合は、まずあるべき姿に戻らないと何をするかわからなくなるので、自分の組織はこれをする、という明確なメッセージと、メッセージを語れる人が必要」との思いを語った。会場からは、「本プログラムはすでに病院の経営となった者対象なのか」という質問があり、橋本氏から「トップではなく、トップを支えて経営を推進できるミドルマネジャーを念頭に置いたプログラムを目指している」との答えがあった。最後に本プログラムに関する受講案内があり、盛況のうちに閉会した。ほぼ会場の席が埋まる状況で、非常に熱気にあふれたシンポジウムとなった。

Post Author: プログラム事務局